改善活動事例・コスト品質改善 リフロー

実装技術アドバイザー / 河合 一男

1. 工法の変更によるコスト・品質の改善

部材のコスト削減については、品質に影響を与えるレベルに近く購入時のコストを下げても、出荷後に発生するコストが大きくなっている。工場であれば出荷するまでのコストで終わるが、会社の利益はトータルでのコストを管理することで確定するので、購買部、製造部、営業部など縦割り的な個々のコスト管理では不十分であり、トータルコストの最適化を目指す必要がある。
本稿では、部材コストの削減ではなく工法変更によるコスト削減と品質改善事例を紹介する。
ディスクリート部品のリフロー化で、特に耐熱性(100℃以下)の低い部品をリフローで実装すると、通常の温度プロファイルではすべて熱影響で部品樹脂部分が溶けてしまう(図1)。
部品の耐熱は、設計上の問題や材質により規定されるが、単に材質の問題であれば、温度より供給熱量をコントロールすることで、部品への熱影響を抑えると同時にはんだの印刷方法で、より熱反応を速くし、かつ、はんだも熱反応の速い物を選び無駄な熱供給を抑える。単にディスクリート部品をリフローするのではなく、同時に不良も抑えなければ意味がない。

安定した品質を確保するには、
  • ①リフロー炉の選定と操作
  • ②冶具の検討(材質、形状、厚み、etc)
  • ③はんだ材料(熱反応特性)
  • ④融点以上は40秒以上を保持する(少し長めにする)
  • ④はんだの印刷方法
  • ⑤基板設計(パターン設計)

に注意する必要がある。図2に示した事例は、ベタ印刷後にコネクタを差し込み、リフローしたものであるが、部品は熱影響を受けずにホールのぬれ上がりは良好であるのがお分かりいただけると思う。

図1
図2

2. 耐熱性の低い部品のリフローのポイント

図3にある部品は、いずれも、耐熱性が低いため従来は手はんだ、またはフローはんだをしてきたものである。しかし、冶具を用いれば、リフロー炉に通しても、写真のように部品本体に熱影響を受けない。耐熱性の低い部品のリフロー化については、以下のようなポイントが挙げられる。

安定した品質を確保するには、
  • ①耐熱性の低い部品は高温・高速で加熱することで熱が部品内部に伝わる前にはんだのみ溶融させる…ヒータ温度は高温設定にする
  • ②温度プロファイルは手はんだやフローはんだと同じイメージで作成する…はんだ面のヒータ3~4 本のみを使用し、他のヒータは使用しない
  • ③部品本体はカバーでおおい、熱をカットする…部品をおおうカバーの材質・形状・サイズの選定が重要である
  • ④基板とヒータの距離、及びファンの回転数の調整が必要である
  • ⑤カバー(パレット、冶具)と基板及び部品の直接の接触の有無が影響する…冶具の給熱と放熱効果が得られる複合材の選定
  • ⑥熱反応の速いフラックス(クリームはんだ)を選び短時間でリフローする…ホール内でのフラックスの膨張・飛散及びボイド発生に注意する
図3 熱特性の低い部品のリフロー前とリフロー後
図4

図4、図5(次頁)に事例とプロファイルを示す。部品をおおうキャップの深さを変えると、リード部の温度が34℃程度変わる。通常、耐熱性の低い部品のはんだ付けでは熱影響を抑えるために、熱伝導の悪い材質で部品をおおう対策を取るが、それは上下ヒータの使い方で変わる。今回は逆に、放熱を考慮した冶具の選定が重要で、様々なノウハウを必要としている。本来、熱は下から上に対流するので、それを考慮した場合は、はんだを部品側に印刷して上から部品を挿入し下部ヒータを使用する方が合理的である(図6)。部品は上下のどちらからでも挿入が可能で、ヒータはリードの向き(上向き又は下向き)に合わせ、上下を使い分ける。今回はクリームはんだを図7のように基板上面(部品本体と反対面)に印刷して、部品を下から挿入し、溶けたはんだがホール下部(部品側)へ流れ込み、はんだ付け後に現場が良否の判定をホール下部周りのフラックス残渣で比較的楽に行えるようにしている。

図5
図6 ヒータの熱は下から上に放熱される。溶けたはんだはホール上から下へ流れ落ちるので、図のような設定が合理的である
図7

3. はんだ付けの基本

はんだ付けの基本は、以下のようなものである。
  • ①フラックスの熱反応と役割
  • ②熱移動

はんだ付けの時の熱量=温度(ヒータ温度)×時間(コンベア速度)×接触面積(冶具形状)×熱伝動(冶具材質)×重力×圧力

図8~図16に、様々なケースのプロファイルを示す。
なお、温度プロファイルは温度センサの取り付け位置や取り付け方によって多少のばらつきが出るので、あくまでも参考として考えていただきたい。
図17、図18は、上記治具に耐熱テープを張ったケースである。
上記条件で部品を冶具に密着させず底面に隙間を設けると、部品表面温度は104.1℃まで上がる。別の条件設定では、146.2 ℃が93.6 ℃になり、約52 ℃ほど温度差が出る。また、リードや基板上面温度は2~3℃程度上がる。このことから、大気の断熱効果が伺われる。技術的には、冶具をより放熱効果の高い材質、または形状のものにすることで、さらに部品表面温度を下げることが可能になると思われる。
上部ヒータの使用を3 本から5 本に増やし、コンベア速度を1.0m/mまで上げることで、部品表面温度を80℃まで下げることができた。リードの温度は229.9℃であるが、基板裏面の温度が214.8℃で、はんだの融点以下であるため熱不足を起している(図19)。

図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19

4. 量産冶具による試作

通常、冶具は断熱効果を目的とし、部品温度120~130℃程度までは制御可能であるが、100℃以下では難しく、今回の冶具は放熱効果を目的としたもので、図20では冶具表面の熱移動も部品1(基板前部に位置)の温度より、部品2(基板後部に位置)の方が温度が低くなっている。
冶具のない通常の条件下では、逆に基板全部の熱が基板後部に流れ1~2 ℃程度高くなる(図21)。今後さらに冶具の形状を検討する必要がある。

図20
図21

5. 引っ張り強度

引っ張り強度は部品やリードが破壊・断線するほどで十分である(図22、図23)。ヒートサイクル試験を経て量産への適用が可能となる。

図22
図23

6. はんだの印刷方法

はんだは熱反応を促進させるため、薄く広く印刷する。基板が十分に加熱されていると、はんだがランドをはみだしてもホールとリードの熱に反応して、リードやホール部に凝集し、ブリッジは発生しない(図24)。
部分加熱の場合に印刷されたはんだが、ランドから外れ過ぎると、ホールからの熱効果が得られにくくなり、未溶融で取り残される(図25)。
また、薄く広く印刷することで熱効果がはんだに速く伝わる(図26)。
ヒータからの熱は、ホール内部でリードから基板側に逃げるので、基板に多くの熱供給し、ホール内部の熱不足を防ぎ、フラックス効力のある間に溶けたはんだの流動性でその熱源へ凝集する。

図24
図25 リードから離れすぎたはんだは凝集できずにボールとして取り残される
図26

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