電子部品、精密部品だけじゃない Ⅱ
デジタルマイクロスコープで絵画を観る
ハイロックスの国内販売会社であるハイロックスジャパンが 東洲斎写楽の「二代目小佐川常世の一平姉おさん」の調査に参加致しまして、㈱絵画保存研究所様のご協力で、ホームページ掲載が可能となりましたので、紹介させて頂きます。
本件は、㈱絵画保存研究所、東京学芸大学、東京藝術大学により、「多くの日本画や浮世絵の技法や材料はどうだったのか」を解明するためのプロジェクトになります。
はじめに
今回の調査で使用された浮世絵は東洲斎写楽により寛政6年(1794年)に木版画にされた作品
「二代目小佐川常世の一平姉おさん」になります。
同じ版木で刷られた作品は10点程が現存しており、東京国立博物館、ベルギー王立図書館などに所蔵されています。
今回の調査では個人の方が所有している作品を使用しました。
ハイロックスデジタルマイクロスコープだから実現する「 観察調査 」
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LED照明で作品への影響を軽減
ハイロックスのデジタルマイクロスコープの光源は
高い演色性(色温度5700K)を備えたLEDランプを採用し、
熱戦、紫外線も少なく、対象物への影響を軽減。
従来のランプに比べ消費電力も少なく、30,000時間の長寿命 -
柔軟な観察システム
額に入れた状態の絵画や彫刻などステージに載せることが
出来ない対象物を観察可能なフレキシブルスタンドや、
大きい対象物に対応する特注大型ステージなど、
レンズ・アダプタ・スタンドのカスタマイズに柔軟対応。
調査と分析
デジタルマイクロスコープだけでなく、以下の様々な機器、方法で調査を実施致しました。
- 紫外線調査
- 赤外線調査
- 透過型電子顕微鏡(TEM)
- 蛍光X線分析(XRF)
- フーリエ変換型赤外分光法分析(FTIR)
- 三次元蛍光スペクトル法分析(EEM)
- 可視光反射スペクトル法分析(FORS)
デジタルマイクロスコープ ~撮影画像~
この作品が刷られている和紙は楮(こうぞ)を用いた最上等の紙で
高級書物用に当時流通していた紙に類似している。
-
和紙表面の凹凸
(3Dイメージ図) -
本紙の繊維
(デジタルマイクロスコープ画像)
色材・彩色技法
有彩色層は木版および手彩色により制作され、糊を含むと想定される。
マウスを絵にのせてみよう


背景の銀灰色
背景には雲母が使用されている。雲母層は厚く筆で塗られたと想定される
襦袢の衿
女性の下衿にも雲母(紅雲母)が使用されている
緑色の着物
粒子状の青色が観察された

背景の銀灰色
背景には雲母が使用されている。雲母層は厚く筆で塗られたと想定される
襦袢の衿
女性の下衿にも雲母(紅雲母)が使用されている
緑色の着物
粒子状の青色が観察されたまとめ
この作品が刷られている和紙は最上等の楮紙であり、こうした紙を用いることができる写楽の身分はかなり高い位置であったと考えられる。雲母による銀灰色を背景に、艶やかな女性が表現されている本作には、襦袢の衿に紅雲母刷りが施され、緑色の着物には粒子状の青色が含まれているなど、女性衣の華やかさを表現するための工夫がなされている。今後、多くの日本画や浮世絵に科学的調査が行われ、技法や材料の理解が進むことが期待される。
過去の美術館/博物館実績一覧
- 東京文化財研究所
- 国宝高松塚古墳壁画修理施設
- ㈱絵画保存研究所
- 国立民族学博物館
- その他欧州美術館にも多数実績有り