量産現場における鉛フリーはんだ 温度プロファイルの見直し検討

実装技術アドバイザー / 河合 一男

1. はじめに

最近の、高密度で微細な実装現場では、不良率の改善が進んでいない。

特に、量産現場がない企業では管理が主で、問題改善については対応が十分と言えない状態である。現場は日々の作業で手いっぱいであり、本社工場からの指示や要求が忙しく、製品の品質より数量の確保に忙しい。

現在、海外生産現場の混乱により、一部の生産は国内や他国へ移管され、本来製造現場と生産管理部門は共同作業で海外企業との競争でコストと品質の改善についてさらに要求されている状況である。

国内では設計が高度になり、マザー工場としての役割を製品に要求されているが、問題が多く見られる。特に、微細な部品を多用してるのにもかかわらず実装現場では対応が画一的で、部品立ちやずれ、及び、はんだボールの多発し、これに伴う検査・修正が生産効率や品質を阻害している。最近では、これらの問題が再度注目されている。

鉛フリーはんだは、2004~2005 年頃から温度プロファイルが固定されたままになっているために、設計の高度化には十分対応できていない。

温度プロファイルのリフロー部ははんだを溶かす部分で、基板による差はあまり大きくない。問題は、プリヒート部の概念が固定しているため、現場では不良の改善が進んでいない。

温度プロファイルは、図1に示すように、一般的な固定化されたリフロー部以外のプリヒート部が品質やコストに影響する。特に、微細部品においてプリヒートははんだ量が少ないために、ぬれ性に影響するが、はんだ付け時の大半の不良の原因になる。

図1 一般的な規格化された温度プロファイル

基本的に、鉛はんだも、鉛フリーはんだも、使用している部品も、基板も、同じ材質で、はんだ付けに使用するフラックスも樹脂(松やに)による金属表面の酸化物を除去して清浄にし、溶かされたはんだと相互拡散による接合である。

大きな違いは、はんだの融点が40℃前後異なることである。フローはんだではすでに溶融しているので、基板・部品へのプリヒートは鉛はんだも鉛フリーはんだも変わらない。まして、手作業やロボットはんだは同条件で差はない(図2)。

図2

図1に示した温度プロファイルでもプリヒート部を最短(90-30 秒)では、60 秒でなまりはんだの温度プロファイルと同じである。

鉛フリーはんだが導入された当初からはんだの融点が高くなるので、プリヒートを長くしたため、フラックスの耐熱性も高く・長く要求されたことで、さらにプリヒート重視の規格となっている。今後の、微細で高密度、及び挿入部品などの実装では、温度プロファイル(特にプリヒート部)の再検討が重要で、量産している海外工場のコスト・品質に大きな影響をあたえる(図3)。

はんだの融点通過時点での急激な温度上昇が、部品立ち、ズレ、及びはんだボール(チップ脇ボール)を発生させるので、この潜熱領域をコントロールすることによってこれらの不良発生を押させることができる。長いプリヒートによってフラックスを劣化させる方法での対応は、これからの微細部品の実装では品質に影響する(図4、図5)。

現場での指導で改善が認められても、実際の導入時にはユーザーや他の部所の都合による規格などで進められない状態が多く、無駄なコストをかけている。

再度、プリヒートの意味・役割を見直し、検討することが重要であるが、最近、ようやく見直しをする企業が増えてきている。

図3

2. 温度プロファイルの事例

プリヒート設定の数値のみこだわらず下部ヒータの操作・設定で実際の不良率等が変化する。

図6は、微細部品のはんだ付けのプロファイルである。基板上面に印刷されたはんだは、リフロー炉の上面のヒータ(ファン回転数)によってフラックスが劣化するので、はんだは基板下部から加熱する。

下部ヒータはすべて高めに設定するが、基板下部の部品への熱影響を考慮し、部品の耐熱性以下に抑える。

① 下部ヒータ温度を250 ℃前後に設定 ② 上部ヒータの1~3ゾーンはフラックスを劣化させないために、オフ、または低く抑える

※はんだは基板ランドの熱で溶かし、部品リードの温度差(ΔT)ではない。

これはあくまで一例で、設定数値も限定されるものではない。基本的に、はんだは基板ランドの熱で溶かし、その熱で部品リードを接合する。

図4 はんだの溶融温度曲線
図5 融点通過時の温度の急激な上昇によるはんだボールと緩やかな温度上昇での対策事例

特に、微細な部品への温度プロファイル(プリヒート部)は、速やかにはんだの溶融まで温度を上昇させ、融点以上で必要な熱量を確保する。従来の温度プロファイルと逆の形状になる。

ヒータ温度は1ゾーンから高く設定し、はんだを溶かす。

微細な部品は、印刷されるはんだ量が微量なため、フラックスが劣化する前にはんだを溶かすことで、ぬれ性やボイド対策に有効である。

日本では、規格に縛られてしまい、このように極端な温度プロファイルは実験することも検討外になるが、海外では、発注の難しいはんだ付けは規格よりも先に良品になるかどうかが問題になる。

図6

リフロー炉の性能によっては、上下ヒータの温度設定を自由に設定できない炉では可能な範囲で設定すればよく、無理をする必要はない。無理をしてしまうと調整に時間がかかりすぎてしまう。

ファンの回転数を通常より低く(設定のlow)すると、10~20℃は差を付けることができるが、10℃の温度差ではあまり効果がない。30℃程度差を付けることができればよりよいのである。

ヒータ温度の設定が適切であるどうかは部品リードのフィレット周りのフラックス残渣の形状で判定する、次にフィレット表面の滑らかさ、フィレット光沢、ぬれ広がりの順に確認する。

プリヒートが適切であれば、ベタ印刷でも良好なぬれ性が得られる(図7)。

これらは、鉛フリーはんだの検討が始まった2004 年にはすでに提案され、一部では実践されていたのであるが、最近の国内への製造現場が一部回帰していること、そして新しい製造管理者の担当者が現状の規格などを見直すことになるようであれば、改善が進むと思われる。

現状、毎週のように市場リコールの情報が上がってきているが、特に電気・電子関連製品では発煙・発火が多いように思われる。

特に自動検査機のみに頼っている現場では、担当者が育たないので、経営者はこれも見直し、現場にマイクロスコープのような検査機も検討すべきである。

図7

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