工法変更によるディスクリート部品のリフロー化においては、今でも手直しをしている現場が多く見られる。この方法は、はんだ供給方法(印刷による供給)と温度プロファイル及びフラックスの熱反応特性のバランスで調整することで不具合を改善できるが、固定化された数値や画一的な手順では不具合は十分改善することができない。本稿では、これまで筆者の元に寄せられたいくつかの質問に関して事例を紹介し、答えるものである。
参考にして、実装工程の効率化につなげていただきたいと思う。
工法変更によるディスクリート部品のリフロー化においては、今でも手直しをしている現場が多く見られる。この方法は、はんだ供給方法(印刷による供給)と温度プロファイル及びフラックスの熱反応特性のバランスで調整することで不具合を改善できるが、固定化された数値や画一的な手順では不具合は十分改善することができない。本稿では、これまで筆者の元に寄せられたいくつかの質問に関して事例を紹介し、答えるものである。
参考にして、実装工程の効率化につなげていただきたいと思う。
はんだ付けの基本は、基板ランドへの加熱で印刷されたはんだを溶かすことであるが、問題はフラックスの熱反応特性によって温度プロファイルの影響が大きく出ることである。
特に、基板が厚い場合は、スルーホール内の熱供給が、過熱または熱不足によってホール内に充填されたはんだのフラックスを急激に膨張させてしまうことで飛散し、ブローホールやはんだボールが発生しやすくしたり、はんだの未溶融が発生をさせたりしてしまうことである。
加熱されたフラックスの流動性によって、はんだが流れ出て、ホール内に穴があく場合や、はんだの未溶融などが起こってしまうのは、「温度プロファイルがフラックスに対して不適切な加熱状態になっている」ためである。特に問題なのは、多層基板の内層のパターンに熱が伝わり放熱状態になり、ホール内ではんだが完全溶融していない場合があることである。こうなると外観からは判断することができない。また逆に過熱状態である場合は、フィレット表面が堅い金属間化合物になってしまう。
温度プロファイルを作成する場合は、印刷されたはんだ(フラックス)の表面を過熱し、フラックスを劣化させないことが大切である。特に、多層基板内層パターンまで十分に、かつ必要以上な熱を加えないようにするため、下部ヒータを高目に設定して基板下部から加熱するようにするが、このときの加熱温度は下部の部品表面温度以下とし、長目に加熱すれば、多層基板内まで十分な熱を加えることができる。
フロー槽では、溶融した250℃の温度で5~8秒程度の浸漬加熱になるが、リフローでは同じように下部ヒータを操作し、基板や部品への温度を調整する。
下部ヒータを活用することで、上部ヒータは基板上面に印刷されたはんだを溶かす程度に抑えることが出来る。
フロー槽では、250℃、5秒以上の加熱では基板上面の温度は180℃以上程度になるので、150℃以下の部品温度は、基板上面に断熱治具が必要で材質や形状が重要となる。
100℃以下では放熱治具が必要で、場合によっては断熱材も併用することになる。
表面実装部品も同時にはんだ付けする場合、温度プロファイルは通常の規格に見るプリヒートを重視したものでは過熱気味になるので注意が必要となる。
図1、図2、図3として、温度プロファイルの事例を挙げる。
はんだ供給において、はんだに厚みが出すぎてしまうと、スルーホール内でのはんだボール、ブローホール、はんだ流れ、ボイドなどが発生しやすくなってしまう。そういう現場では、ディスペンサを用いるよりも、はんだ量をコントロールしやすい印刷をおすすめしたい。
長いリード数の多いコネクタは、短冊型の印刷で特に問題はないが、多列ピンのコネクタでは溶融するはんだが部分的に凝集するので、印刷時の形状が各ピンに均等に凝集するような形状に印刷する。これは同時に温度プロファイルの影響も大きくなる。
図4に示すのは、印刷とはんだ凝集事例である。
はんだの凝集は、均等ではなく、ばらばらに凝集するのでブリッジや飛散、ブローホールになりやすい。また、溶融はんだは基板の移動方向(流し方向)や内層の熱移動の影響も発生するので温度プロファイル(下部ヒータ)の設定の影響を受ける。
図5に印刷提案事例を挙げる。なお、注意点として、以下のことに留意していただきたい。
・多層コネクタのホールランド幅が狭いとブリッジが発生しやすい
・ホールランド幅が狭いと、溶融したはんだのフィレットが形成しにくく、ホール内に流れたり、逆に盛り上がってブリッジになりやすい。基板の厚みとランド幅調整が必要である
ホールが千鳥状に並んでいる場合は、ホール間のピッチも狭く、はんだ量またはランド形状に捨てランドのように、歪な形状を検討する必要もある(図6)。
また、ホールランド径とリードの長さによって、はんだ量を調整し、はんだの穴あきを防ぐようにする(図7)。
なお、これらは各工場のノウハウでラインや基板設計に合わせたものであり、画一的に現場に規定すると手直しが多くなってしまう。
問題は、これらの技能も国内大手発注元では認められにくく、普及しにくいことである。しかし海外の工場や協力会社ではこの方法への要望と関心が強くあり、特に海外ローカル企業は興味を示している。
現在のフローはんだの多くの不良は、基板の搬送角度の影響を大きく受け、基板と溶融はんだの接触面が狭く、基板内、特にスルーホールの熱不足によるはんだ上がり不良が問題となっている。
はんだ槽温度を高くしたり、浸漬時間を長くすると、フラックスの劣化を招き、ブリッジになってしまう。フラックスの耐熱性を高くすると、赤目やパレット開口部の狭い個所や深い個所では未はんだなどが発生しやすい。
本来、鉛はんだ実装時と同じ基板搬送角度を低く(5 度以下)することによってはんだ槽温度やフラックスへの熱量(浸漬時間)の過熱を抑えることで、不良率を改善することができる。
最近では基板搬送角度を3度以下にする試みも始まっている。
図8の事例では、2次槽のはんだとの接触面が全面で広く、静止槽と同様の効果が得られており、スルーホール上がりも改善されている。また、フラックスの選択によって、ブリッジも改善できている。
パレットの材質や形状及び厚みなどを見直すことで、現状のはんだ槽の欠点を補い、不良率を改善することができる。
パレットの改善による不良率の削減が得られた事例で、設計の手直しを加えることによってさらに改善効果が出る(図9、図10)。