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HiROX Technical Report

量産現場におけるはんだ付け技術

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基本的な認識 リフロー①

実装技術アドバイザー / 河合 一男

 現在の製造工場には、設計との連携が不十分であるために手直しが必要となる状況が、ときどき見られる。
 ランドの形やサイズ位置が、部品メーカーや基板メーカーの推奨ということでそのまま取り入れられ、実際の部品との違いを確認せずに現場に伝えらている。
 量産現場ではそれぞれの環境の事情によって部品や基板品質が安定しない状況であるが、製造は本来、調整が必要な状態にあるにも関わらず、同じ数値管理のもとで作業されている現場が見受けられる。
 規格をつくり、指示する方としては、最低限のものを示したつもりであっても、受け取る方はこれを限界値として捉えるために高度に変化する設計に対応できず、時間とともに問題を内在化した製品作りになってしまい、市場でトラブルが発生して初めて気がつく、という状態になりかねない。
 規格や規則は、その前提の変化にあわせて絶えず変えなければならないが、日本の社会では、特別な事情がなければ、一度決めた規格や規則はそのままで次々と新しい規格・規則が追加される。ものづくりにおいては、現場裁量が極端に狭まれており、本来、あるべき姿からはずれている。
 また、海外展開や一時のリストラなどでの人材不足によって、過度の規格頼みの工場運営になっている。部品が安定し
ない状況でのものづくりは、その手順と共に望むべく完成品の基準が重要である。
 現場の条件からみて、無理をしなければできない設計が多くなっているため、品質規格の本質を外れない範囲で現場の裁量を広げ、より柔軟な対応ができるようする必要がある。特に、海外工場では当初は細かい情報まで伝えられ、サポートも受けられるが、人の移動もあり、時間とともに数値変更のみで細部のノウハウ的な情報は伝えられなくなる。
 特に、はんだに関しては、現場が工場環境にあったものを選び、その品質を本社や発注元が判定する方法に変更することで、不良を削減し、無駄な検査工程を省くことができる。現在は、はんだの変更については現行のメーカーであれば比較的認可されるが、他社への変更は未だ難しく、基板設計や装置との相性の良くないものが使われている。同じメーカーでも品名が異なればフラックスの熱特性も変わるので、化学的品質チェックは新規製品同様の評価が必要である。
 京都府実装技術研究会では、現場でのフラックスの熱特性評価方法とフローのリフロー化、及びディスクリート部品のリフロー化の実験を行っている。評価判定は、最終結果ではなく、過熱の時間経過時のフラックスの熱挙動を把握して判断する。
耐熱性が高く、かつ早い段階でフラックスがフィレット上で暴れ、外へはみ出す特性が見られる
①フラックスのはみ出し(破線部) ②はんだ粒子のはみ出し(矢印部)
③はんだのぬれ広がり不足(破線⇒部)
注:フラックスと度プロファイルの不適合が原因
温度プロファイルの変更によりはんだ粒子のはみ出しとぬれ広がりは改善しているフラックス残渣のはみ出しは変わらない。また、フィレット表面の滑らかさも不足しているが特に問題になるレベルとは思われない
図1
 図1 の事例1、図2 の事例2で示した実験では、いずれのはんだも、改善プロファイルの方がフィレットのはんだ量が多くなっている。これは、下部ヒータの影響で部品下部への はんだの流れ込みが抑えられ、印刷された場所でリードにぬれ上がっているためと思われる。
≪メーカーA 現行プロファイル≫
①ぬれ広がり不足 ②フィレット表面に滑らかさがない
③フィレットに凹凸が見られる ④フラックス残渣の気化が少ない
≪メーカーA 改善プロファイル≫
①ぬれ広がりは改善されている
②フラックス残渣はフィレット上にまばらに固まっている
≪メーカーB 現行プロファイル≫
①フラックスのフィレット外へのはみ出しが見られる
②フィレット表面は滑らか
≪メ—カーB 改善プロファイル≫
①フラックスのはみ出しは少なくなっている ②フィレットは滑らか
③フィレット量は多い ④フィレット上にフラックス残渣の塊が見られる
≪メーカーC 現行プロファイル≫
①フラックス残渣のはみ出しはない
②フィレットは滑らか
注:長い温度プロファイルではんだが部品下に流れ込んでいる
≪メーカーC 改善プロファイル≫
①フラックスのはみ出しは見られない ②はんだ量が多い
注:従来の温度プロファイル対応のはんだ印刷量では多すぎる
  はんだ量を適切にすることで、はんだボールやブリッジは改善できる
図2
 通常の温度プロファイルでは部品下の温度が低く、リードからの熱が部品下に移動するのに伴い、フラックスとはんだも部品下部に移動するために部品リード部のフィレットが薄くなる。また、部品下の熱量が不足するために全体の温度プロファイルが長く、過熱気味になる。 ①A社のはんだはフラックスの耐熱性が高く、熱反応が鈍く、
 フラックスの気化が少なく、はんだの熱反応も遅い
②B社のはんだは、A社のはんだより熱反応が速い
③C社のはんだは熱反応が速いので、よりコンパクトな温度
 プロファイルですむため、部品や基板に対する熱影響を抑
 えることができる
各社のフラックスの熱特性の違い
 このように、温度プロファイルは使用するはんだの熱特性や基板(設計・材質・サイズ・etc)、及び装置性能に対応しなければ、実装品質に影響を与えてしまうことになる。管理された工場では完成品の品質から遡って実装条件を決めるべきである が、量産現場のない本社サイドでの規格や装置選定では、現場への負担が多くなるばかりで品質が安定しない(図3)。
フラックスの初期噴出しによる粒子サイズのはんだボール、全面をフラックス残渣が覆って気泡あり
フラックスの飛散によるはんだボール フラックスの流失による光沢不良 フラックスの流失とボール
フラックス残渣に、きれが見られない はんだがリード上までのぬれ上がっている
図3 設計ミスによる不良事例
 耐熱性の高いフラックスではフラックスの熱反応が遅いので、過剰なプリヒートを設定する場合が多いが、それではフラックスの活性力が劣化してぬれ性やボイドなどに影響を与えるので、はんだ選定(指定はんだの供給時)時にその熱反応を時系列で評価し、それにあった温度プロファイルを設定すべきである(図4)。
 各社は様々なはんだを開発しており、それぞれフラックスの熱特性が異なる。そのため、使用する側は的確な温度プロファイルを作成する必要があるが、一般的にはその型のみにこだわり、実際のフラックスに対する熱反応に対応していない。
 JEITAの温度プロファイルは、主に部品の耐熱性から必要な温度(加熱)範囲を示しているものである。そのために、数値の幅を大きくとっている。装置の性能特性や性能劣化、基板の材質、フラックスの熱特性などで変わるので、リフロー後のフラックスの状態から判断する方がより合理的である(図5)。
 現場での対応時の選択肢が多くなれば、それだけ品質とコストの改善が可能になる。現状の規格化は、現状レベルに対しては有効であっても、絶えず進化する設計には対応できず、結局は不良原因が不明のまま、市場に不良品を流失させてしまう。
≪温度プロファイルの改善効果≫
フラックスの効果で溶融はんだの流動性が持続し、発生するガスはフィレット(ボール)から放出され、ボイドは改善される
注:過熱時間を長くすることでも細いリードやボールのボイドを削減することはできるが、
部品・基板への熱影響と接合界面の金属間化合物が成長するので、接合品質に影響する
図4
温度プロファイルは波形よりはんだの
溶融するまでの時間が重要である
過熱気味であることからフラックスが劣化しており、フィレット表面の光沢は改善されているものの滑らかさがなく、ボイドの評価が必要なレベルである。また、金属間化合物の成長も疑われる
≪温度プロファイルの変化≫
最近、温度プロファイルの変更が提案されてきているが、従来の温度プロファイルからの理論根拠が示されていない。
特に海外ではこのような新しい情報は伝えられることが少なく、相変わらず固定観念での対応で不良を出し続けている。
また、型のみ伝えられているので、十分な品質の改善につながっていない
図5
 フラックスの熱特性の違いは、フラックス残渣で判断できる。エレクトロニクス実装技術2014 年9月号の京都実装技術研究会の松原氏のレポートに示されているように、実験温度やはんだ溶融までのフラックスの挙動が重要である。
 消費者庁から出ている家電製品の市場リコールを見ても従来の感覚から見て首をかしげるような内容が見受けられる。
 なお、京都府の実装技術研究会では、はんだ付けの基本的な技術から工法の変更など幅広く、また実際のリフロー炉を使用して各種実験研究をしている。単なる座学ではなく、実際の条件を変更した場合の変化や、部品、基板及びフラックスの評価を通して、個々の現場での不良対応をすばやくできるように研究している。
 また今年は、手はんだ付けの実習も2回行ったが、単に理論のみで終わるのではなく、できばえの評価方法を含めた内容で、即現場で活用できる現実的なものであった。
 会員は京都府以外の他府県からも多く参加されており、大手企業でも初心者の教育に活用されている。特に製造が忙しい、または海外などの遠隔地に工場がある場合など、改めて実ラインを使用しての確認実験がなかなかできない状況では、現物の不良品の解析や対策にも活用できる研究会となっている。
 また今回は、フラックスの評価方法と耐熱性の低い部品やディスクリート部品のリフロー及び201チップ部品の実装方法を実験した。
 リフロー炉を使用した実演セミナーには70 名近くが参加したが、京都実装技術研究会は通常のセミナーと異なり経営者から品管や設計生産技術、製造技術及び現場作業者まで幅広く参加している。内容はインターネットでも見られるので、参照していただきたい。
 また、興味のあるテーマがあったらお知らせいただきたい。実験を行い、機会をみてレポートさせていただく。
同じ温度プロファイルでも溶融・未溶融の差が出る、フラックスの違いによる溶融・未溶融の差
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